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辻清明『政治を考える指標』(岩波新書)

 

政治を考える指標 (1960年) (岩波新書)

政治を考える指標 (1960年) (岩波新書)

 

  この本が出版されたのは1960年。安保条約が片務的なものから双務的なものへと改定されようとしているときだった。著者は政治が「大きな曲がり角」に来ているとし、政治批評を繰り広げる。著者は、当時の政治の問題として、(1)国民の自発性を尊重していないこと、(2)多元的な国民の利益を抑えるために抽象的な国家観念を乱用していること、(3)野党の意義を認める統合の原理を理解しないこと、を挙げている。その問題意識のもと、議会政治や政党政治、官僚政治について問題点を指摘していく。

 本書は、政治について一定程度の教養のある者なら容易に読み飛ばせるものであり、とりたてて専門的な内容は含まれていない。政治をよく知らない一般の人に、政治というものがどういうものであって、当時の政治はどんな問題を含んでいるかを説いた書物であって、政治の素人には一定程度の啓蒙効果はあったと思われる。私としても、当時の知識人の問題意識のありかを知って面白かった。