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立川武蔵『聖なるもの 俗なるもの』(講談社選書メチエ)

 

聖なるもの 俗なるもの ブッディスト・セオロジー(1) (講談社選書メチエ)

聖なるもの 俗なるもの ブッディスト・セオロジー(1) (講談社選書メチエ)

 

  宗教的なものとは何か、というごく基本的な問題から宗教学へといざなう本。

 名状しがたく、非日常的で力があり不気味で、しかし魅惑的ななにものかがある時空間とそういうものがない時空間、それを「聖なるもの」「俗なるもの」という。この二つの領域の間で宗教行為は行われる。

 聖なるものには様々な濃度の差、位階の差があり、その差は場面において刻々と変わっていく。

 本書は宗教とはどういうところで生じるのかについての基本的な考え方として「聖俗」の区別を持ち出している。聖なるものとは例えば自然の神々しい美しさでも構わない。この聖なるものの規定は、宗教をむしろ神秘的な領域から解き放つもののように思える。例えば芸術作品の鑑賞体験も十分聖なる時空間で行われうるし、聖俗というものは連続して様々なグラデーションを持つ。「聖なるものの美学」を問うことは十分可能だろう。