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立川武蔵『マンダラという世界』(講談社選書メチエ)

 

 仏教にとって世界とは何であるかについて書いた本。

 仏教は、「世界の中にあること」「自己と他者との関係」を縁起と読んできた。密教においては世界と聖なるものは一体であり、それはマンダラである。ところがマンダラとは空なるものに過ぎない。実在する何ものかでなく、神と呼ぶ必要もなく、世界の第一原因でもないなく、しかし聖なるものの働きを可能にする立場を仏教は求める。

 本書は、仏教の世界観について記述したものであり、キリスト教との比較などなされていて面白い。不変のがっちりした「世界」なるものを措定しないところに仏教ならではの柔軟さが感じられる。西洋哲学ではくどいほど出てくる「世界」という概念が別の角度から見直される面白い本だった。