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伊藤邦武『プラグマティズム入門』(ちくま新書)

 

プラグマティズム入門 (ちくま新書)

プラグマティズム入門 (ちくま新書)

 

  プラグマティズムについて、その発生から現在に至るまでの流れを概説した入門書である。

 パースによれば、思想の意義とは、その思想がいかなる行為を生み出すのに適しているかである。真理とは道具であり、うまく物と物との間をつなぎ、我々の経験の一つの部分から他の部分へと順調に我々を運んで行ってくれるものである。

 このように、プラグマティズムとは思想や真理といった概念を明晰化する理論であり、人間の知的活動の持つべき探求方法についての理論である。プラグマティズムは、我々の探求が弾力的で可謬的であるという反デカルト主義を掲げ、また真理は有用な道具にすぎず複数ありうるという多元主義を掲げる。

 「プラグマティズム」という言葉は、「実践主義」のような意味で日常語のように使われたりするが、その哲学的な意味はこうだよ、と丁寧に解説してくれる本。現実的で柔軟で前進的なその思想に魅惑される人は多いと思う。特に日本の風土に何らかの違和感を感じている人は、割とプラグマティズムに惹かれると思う。