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竹中千春『ガンディー』(岩波新書)

 

ガンディー 平和を紡ぐ人 (岩波新書)

ガンディー 平和を紡ぐ人 (岩波新書)

 

  ガンディーは良心の人であり、不正義に対して屈することなく非暴力的な運動を起こすことで歴史を動かした稀有の人物である。

 イギリスで弁護士資格を取ったガンディーは南アフリカでインド人移民が抑圧されている現実を目にし、新聞を発行したり農場を建設したり、何より「サッティヤーグラハ運動」を創造した。そこでガンディーはアジア人登録法案に反対し、政府や議会に抗議した。民衆運動を指揮し、「トランスヴァールの大行進」を成功させ、政府にインド人救済法を可決させた。

 南アフリカからインドへ帰国したガンディーは、インドにおいても民衆の指導者となる。「サッティヤーグラハ・アーシュラム」という農場を建設したり、農民運動や労働争議を指揮して成功を収める。人々に権利意識を与え、運動を拡散させる。本国イギリスによるインド人への抑圧的な政策に対して次々と反抗の運動を組織した。中でも象徴的なのが「塩の行進」である。19世紀以来、政府はインド人の塩に課税してきた。この国法に服従せず、インド人の独立を宣言するため、ガンディーは民衆たちと行進した。

 ガンディーは植民地時代のインドにおいて、本国イギリスによるインド人抑圧に対して徹底的に不服従を貫いた。そしてそれを民衆運動として現実に実行に移した。これだけの正義感、そしてそれを行動に移す実行力、また政治的な駆け引きの能力は卓越したものがある。まさに政治的な指導者にふさわしいカリスマ性を備えた改革者だった。ロックミュージックが生まれる以前の人物だが、私から見ると極めてロックな生き様をした人間のように思える。素晴らしかった。