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家永三郎『革命思想の先駆者』(岩波新書)

 

革命思想の先駆者―植木枝盛の人と思想 (岩波新書 青版 224)
 

  自由民権運動の立役者である植木枝盛の人と思想を紹介した本。

 植木枝盛は明治の時代に、翻訳書により欧米の人権思想を吸収しながら政治活動や言論活動を行った。それはフランス革命アメリカ独立宣言などに影響された人権思想に基づく革命の考えだった。

 植木は、政府や国家は人民のためにあると考えた。政府や国家は人民を抑圧するのではなく、人民の権利を全うするために存在する。また、国家は人民の意思に基づき成立するのだから、普通選挙や男女の平等は必須であると考えた。さらに、勤労民衆が当時貧困にあえいでいたことから、勤労民衆の団結の権利を訴えた。また、不平等な封建思想である家父長制を廃止することを提唱。

 植木の思想は敗戦後現実のものとはなるが、それにしてもだいぶ時代を先駆けていた。だが、日本がいまだに封建思想で閉ざされていた時にいち早く欧米の事情から学び、社会のより良い改革を唱えた先見性は素晴らしい。自由民権運動は言わば早すぎた思想だった。社会の地盤の方をじっくり変えていかないと根付かない急進的な思想だった。社会運動のやり方についても考えさせられる。