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齋藤直子『結婚差別の社会学』(勁草書房)

 

結婚差別の社会学

結婚差別の社会学

 

  同和問題に基づく結婚に関する差別的取り扱い(破談など)についての質的調査。

 齋藤は、多くの人たちにインタビューしながら、結婚差別がどのような構造をなしているか分析している。結婚差別は典型的に、うちあけ→親の反対→カップルによる親の説得→親による条件付与、という構造を取る。もちろん、事例によってそのバリエーションは様々である。それぞれの段階について、齋藤は詳細な事例を引用して説得的な論の展開を進めていく。

 本書は現代社会に対する問題提起の書である。もちろん、結婚差別なんて全く考えていない人たちも多いが、依然部落出身であることによって差別する人はいる。この現代社会に紛れ込む前近代性という問題は興味深い。さらに、部落差別に直面したときのカップルのとる対応というのも面白い。ここにはコミュニケーションのドラマがある。大変楽しめる本であった。