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服部泰宏『採用学』(新潮新書)

 

採用学 (新潮選書)

採用学 (新潮選書)

 

  優秀な人材を採用するための方法を科学的に提言する本。

 採用力=採用リソースの豊富さ×採用デザイン力 である。採用のために動員できる予算や人的資源、人脈やブランド力に、優秀な人材を選抜できる採用方式を考案する力をかけたものが優秀な人材を採用することのできる能力である。

 研究によって、人間にはトレーニングによって変わりやすい能力と、トレーニングしても容易に変わらない能力があることが分かっている。変わりやすい能力としてはコミュニケーション能力、変わらない能力としては知能が代表例として挙げられる。採用に当たっては、訓練によって変わりにくい能力を重視すべきであり、コミュニケーション能力のような変わりやすい能力を重視すべきでない。

 採用についても科学的なロジックと厳密なデータに基づいたエビデンスに基づき、経営学的手法による実践が望ましい。

 本書は、経営学の理論を採用という旧来あいまいに行われてきた領域に導入した画期的な本である。採用ほど経験や勘・フィーリングで行われてきた領域は少ないだろう。そこでは落とすべき人が採用され落とすべきでない人が採用されないという不具合が生じていた。それに対して優秀な人をほぼ間違いなく採用するためのロジックを提供するのが本書である。良書である。