ほんとうの憲法: 戦後日本憲法学批判 (ちくま新書 1267)
- 作者: 篠田英朗
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/07/05
- メディア: 新書
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国際協調主義を重視する立場から憲法学の通説を批判する本。
日本ではドイツ憲法学の系統を踏襲した東大法学部の憲法学が権威を有している。だが、そこで主張される国民主権が国歌を制約するという立憲主義はそもそも憲法の成り立ちからしてそぐわないのではないか。むしろ、日本国憲法はアメリカ憲法から多大な影響を受けたという歴史的事実、そして不戦条約からも影響を受けたという事実を重視するべきである。
アメリカ法において、絶対的な主権というものは存在しない。国家は契約で出来上がっており、国民の権利ですら他のモメントから制約を受ける。ここには絶対的な主権など存在せず、それゆえそれに抵抗する人民の主権などというロマンも成立しない。
また、日本国憲法は国連憲章など平和を規定する国際条約の焼き直しに過ぎず、特に新たに平和を宣言したものではない。憲法九条は国際条約を守るという意味しか持たず、それを必要以上に美化することはできない。
本書は日本憲法学の通説を国際協調主義、そしてアメリカ法からの影響の観点から批判したものである。憲法9条をめぐる議論は錯綜しており、様々な思惑が交錯しているが、そういった憲法をめぐる問題に筋の通った一貫した批判理論を提示している。国民主権はそんなにロマンチックなものでもないし、平和主義もありきたりなものである。日本憲法学の幻想を打ち砕き、歴史と整合的な憲法解釈を示す良書である。