「男性は男らしく、女性は女らしくなければならない」とするジェンダー規範が社会には存在し、社会進出し発言する男性と家を守り話を聞く女性という役割分担が成立してしまっている。政治の様々な過程において男性支配がしみ込んでいる。
民主主義は女性をないがしろにしてきた。男性の選挙権は女性の選挙権に先立ち成立し、女性の意見が十分反映される民主主義の成立は遅れた。社会政策にしても、男性稼ぎ主モデルを促進するような政策が多く実行され、所得税の配偶者特別控除や終身雇用、家事・育児・介護のケア労働を女性が負担するというロールモデルなど、女性が社会進出しづらい制度が出来上がっている。そして、女性政治家が少ないことも女性の意見が国政に反映されない原因であり、そもそも立候補者として女性を擁立する機運が少ない。
本書は、政治学の教科書的記述にいかにジェンダーの視点が欠如しているかを批判的に指摘したうえで、女性の参加できる民主主義への道筋を示すものである。マンスプレイニングやマンタラプション、つまり男性が主な説明役となり、女性の話を男性が遮るというよく見る風景から変えていかなければならないものであり、一朝一夕で状況が改善されるものではないが、時代はどんどん男女平等へ舵を切っている。