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『やっかいな人のマネジメント』(ダイヤモンド社)

 

  本書は『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された論文の中から厳選されたもので構成されている。本書はEmotional Intellegence(EI、感情的知性)を主題として掲げたシリーズの一冊であり、EIとは自分の認知を生かして自分の感情に影響を与え、翻って面倒くさい相手の感情をも変えて行けるスキルのことである。

 これから日本の雇用もジョブ型に変わりつつある。人材が流動的になるにつれ、いつ急に面倒くさい上司がやってくるかわからない。また、これからは多様性が重んじられる社会であり、そうすると自分とは異質なメンバーとともに仕事をすることも増えてくる。また、AIの進歩とともに単純作業はAIがやり、人間は人との関係のマネジメントなどのソフトスキルが一層求められることになる。これからEIが求められるのはそういう背景に基づく。

 本書は3つのポイントから成り立っている。一つは、人間は認知を使って物事を理解するが、行動へと突き動かすのは飽くまで感情であるということ。一つは、自分の認知と他者の認知は異なるということ。もう一つは、相手は変えられないということ。

 さて、本書には様々なやっかいなチームメイトへの処方箋が書かれているわけであるが、それらの処方箋はそれほど真新しいものではない。だが、その処方箋へとたどり着くまでの論述が重要なのである。記事の執筆者は飽くまで論理的に筋を通して最新の経営学的知見に則って結論に至っているのである。その理屈を理解することが重要な本だと思う。また、自分の感情を変えることで相手の感情もよい方向に変えていくというEIのスキルはビジネスパーソンには必須のスキルであろう。私も磨いていきたくてこの本を読んだわけであるが。