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澁谷智子『ヤングケアラー』(中公新書)

 

  ヤングケアラーとは、家族の介護を行う18歳未満の子供のことである。ヤングケアラーは教育を受ける立場で知識形成や人格形成の時期にあるが、介護を行うことが重荷で学校を休みがちになったり学業に励めなかったりと十分な学習を行えず、困窮している。ヤングケアラーは一定数存在するが、その存在はそれほど可視的ではないため、教育の現場などを通して可視化して必要な支援を行う必要がある。

 ヤングケアラーへの支援としては、ケアについて安心して話せる相手と場所を作ること、家庭で担うケアを減らしていくこと、ヤングケアラーについての社会の意識を高めていくこと、が考えられる。その際、当人の話を十分聞き、当人の希望を中心に支援を形作っていくことが求められる。

 本書はヤングケアラー問題への格好の入門書である。私は日本にもこのような問題があることを知らなかった。私自身ヤングケアラーではなかった。だが、人生で一番可塑的で吸収力のある時期に家族の介護で摩耗していくことはヤングケアラーのみの損失ではなく社会的損失でもある。この問題についてはぜひ多くの人に知ってもらいたい。