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エリカ・フランツ『権威主義』(白水社)

 

権威主義:独裁政治の歴史と変貌

権威主義:独裁政治の歴史と変貌

 

 民主主義の対極にある独裁制などの権威主義について書かれた体系書。権威主義とは競争的な民主主義が成立していない独裁制などのことである。

 権威主義の主要なアクターは、リーダー、エリート、大衆である。権威主義は貧しい国に多く、豊かな国は民主主義国であることが多い。権威主義のリーダーはなるべく自らの地位に長くとどまろうとする。そのための大衆抑圧やエリートの抱き込みなど、リーダーは様々な手を尽くす。また、権威主義はリーダーによって担われるのではなく、エリートの集団からなる権威主義体制によって担われることもある。権威主義はクーデターにより権力を掌握することが多く、民衆蜂起などは数が少ない。

 最近、民主主義について書かれた本が多く出版されている中、権威主義について体系的に整理された本書の存在意義は大きい。権威主義体制はその不透明性から外部からその内部を把握することが困難ではあるが、それなりの研究の蓄積がある。世界には権威主義の国の数が少なくない。そういった国はこれからますます存在感を増すだろう。かなりの良書だと思う。