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ラリー遠田『お笑い世代論』(光文社新書)

 

  お笑いの戦後史を簡潔に述べている。

・お笑い第一世代:ザ・ドリフターズ萩本欽一

 テレビという新しいメディアに合わせた新規性のある「テレビ芸」を作り出す。

・お笑い第二世代:ビートたけし明石家さんま

 プロの芸人があえて素人のようにふるまうことで斬新でテレビ的な笑いを生み出す。

・お笑い第三世代:とんねるずダウンタウン

 子弟制度から解放された最初の世代。テレビを自分たちの遊び場にする。

・お笑い第四・第五世代:ナインティナインロンドンブーツ1号2号

 コント番組が減りバラエティ番組が増えた時代にいち早く適応した。

・お笑い第六世代:キングコングオリエンタルラジオ

 テレビの影響力が下がってきた時代にテレビで挫折し、テレビとは別の場所で活動。

・お笑い第七世代:霜降り明星、EXIT

 地上波テレビは数ある選択肢の一つにすぎず、芸人の生き方も価値観も多様に。

 本書は、テレビとともに歩んできた戦後お笑い界の通史を提示した価値ある書である。著者については、お笑い評論家としてデビューした当時から注目していたが、このような体系的な書物をまとめたことについて、心から祝意を示したい。本書はお笑いの通史の一つの里程標となることが間違いない。バランスの取れた記述と鋭い批評意識に貫かれていてとても良かった。