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東野純彦『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎)

 

  妻が出産したため手に取った。産後の妻のうち約7割が夫を愛していないという調査結果が出ている。このように産後の夫婦仲が急激に悪化することを「産後クライシス」という。出産により女性はエストロゲンが急激に低下し、産後三日以内にマタニティブルーズという気分障害を起こすことがある。産後二週間たっても症状がおさまらない場合は産後鬱である。このような時期に夫が妻に寄り添えないと産後クライシスが起こってしまう。

 産後妻の体内にはオキシトシンが大量に分泌され、これは赤ちゃんへの愛情の基礎となるが、同時に赤ちゃんを脅かす者への攻撃をも生み出す。だから、産後の妻への接し方には注意が必要で、ひたすら共感すること、家事を進んで手伝うこと、コミュニケーションを密にとることが大事である。

 本書は産後の妻の取扱説明書であり、極めて実践的な知識が書いてある。もちろん理論に裏付けられているわけであるが、産後クライシスを避けて、また夫の方もパタニティブルーを避けるため、自己受容・他者信頼・他者貢献、そして密な共感的コミュニケーションをとる必要がある。この時期に読んでよかった。とても勉強になった。