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斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)

 

  気候変動の時代に人類が生き残るために資本主義では限界があることを主張。資本主義というのは犠牲のシステムであり、たえず外部に不経済を発生させることで成長する。外部とはグローバルサウスであり、そこには必ず南北問題が存在する。グローバルサウスが消滅した後、外部不経済はもろに先進国内部へと流れ込む。

 だから資本主義の枠内でいかに持続可能性をうたったところで気候変動を止めることはできない。SDGsもグリーンニューディールもしょせんは資本主義の成長神話のもとでなされている主張であり、それでは来るべき気候崩壊を止めることはできない。

 そこで参照されるべきは後期マルクスであり、脱成長、コミュニティの重視などが重要である。なかでも、商品の生み出す「価値」ではなく、その有用性である「使用価値」を重視することが大事である。経済の流れで生み出される価値ではなく、モノやサービスそのものの価値を重視するのが大事だ。だから、エッセンシャルワーカーの価値こそが大事なのである。

 本書は気候変動という人類が直面している大きな危機に対して脱成長という処方箋を提示している。議論は丁寧であり、文体も怜悧である。だが、ここには実践的な側面についての具体的記述は欠けている。理屈としてはそうかもしれないが現実にそれは実現可能なのかと問われるとかなり厳しいと思う。社会を変える方法こそが待たれているのではないか。