社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

小松理虔『地方を生きる』(ちくまプリマー新書)

 

 ローカルアクティビストとして活躍する著者の実体験に基づく地方暮らしのエッセイ。地方では自分の生き方の可能性が広がる。競争相手が少なくコストがかからないから、失敗しても再チャレンジできる。だから、暮らし方、働き方、生き方を自分で決められる範囲が広がる、そのハードルの低さが地方の魅力である。

 地方には魅力も課題もある。食や自然の豊かさなどがある一方、給料が低い、ブラック企業が多いなどの課題もある。だが、魅力も課題も「面白がる」ことが大事である。課題に「ふまじめに」取り組むことでエラーが生じ、思いがけないポジティブな事態が生じる、そういう「誤配」が重要である。

 本書は、地域で活動する著者が、自らの生い立ちや経歴をはじめ、実際に地方で暮らしてみて思ったこと感じたこと、そして地方がいかに魅力的であり、地方の課題とどう向き合うか、そういうものをライトにつづったエッセイである。ところどころ学者の思想の引用などあるが、理論性は低いと思う。だが、気軽に読める「地方入門」ではないだろうか。