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イクメンになって直面したこと

 男性の育休取得がだいぶ普及してきた。私もこの夏に育児休暇を1カ月取得し、その後も仕事をしながら育児に携わっている。だが、この「イクメン」を取り巻く状況は決してやさしいものではない。一つには、これまで世のママたちが背負ってきた苦労を共に背負うという側面がある。もう一つにはイクメン特有の苦労というものがある。

 まず、イクメンになって直面したのは先輩ママたちからのマウンティングである。親身になって相談に乗ってくれる先輩ママもいるわけであるが、そうではなく、「そこはこうすべきにきまっているじゃない」とか要らんアドバイスをしてくる人たちのなんて多いことか。人によっては頼んでもないのに子供の話をしただけで求めていないアドバイスをずけずけとしてくる。挙句の果てには「もう一人子供を作りなさい」とか全く不愉快なことを言ってくる人までいる。世の新米ママたちは、このように先輩ママたちからのマウンティング地獄に耐えていたのだな、と気づかされた。

 そして、イクメンになって直面したのは「子育ては女性がすべき」という根強い固定観念からくるイクメンへの対応の冷たさ。子育ての話を男性がするだけで不愉快感をあらわにする人もいる。特に女性にとって子育てはある意味自分たちの聖域だったわけである。その女性の聖域に男性が踏み込んできたわけである。女性たちの気持ちは複雑だ。やっと男性たちが理解を示してきたと肯定的に評価する女性もいれば、男ごときが何を余計なことをと否定的にとらえる女性もいる。そういう人たちは昔ながらの男性稼ぎ手モデルにとらわれていて、「男は仕事、女は家庭」という固定観念に縛られている。男だったら仕事だけしてればいいのよ、というのが彼女たちの心情だ。

 もちろん、イクメンになって良かったこともある。育児も仕事もしてえらい、と素直に称賛してくる人も結構いるのだ。昔は女性ばっかりがつらい育児をしていたのに今は男性も手伝ってくれるのね、ありがたいわ、と社会の進歩を歓迎する声も聞こえてくる。だが、男性の育児参加はまだ社会全体から歓迎されているわけでは決してないことは言っておきたいし、育児をすることにより、今まで新米ママたちが直面していた苦労を背負うことになることも言っておきたい。男性の育児参加はまだまだ道半ばである。