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ジョオン・サースク『消費社会の誕生』(ちくま学芸文庫)

 

 16~17世紀イギリスでのイノベーションについて記述している本。近世イギリスにおいては、既存の物の組み合わせによる新たな事業が発達し、その供給は需要を生み産業が活発化した。近世の新規事業は政府の支援と介入のもと行われ、グローバル化する商品経済・貿易の発展の影響を受け、経済領域の貿易バランスの改善や雇用創出、税収アップなど様々な役割を果たした。新規事業には特許が与えられたが、特許は独占などの腐敗を生んだ。新規事業は地域社会レベルで長期的な影響を生み、消費社会を発展させた。

 消費社会やイノベーションというと現代社会の特徴のように思われがちだが、それらは近世イギリスですでに発展していた。近世イギリスにおける分析は、そのまま現代社会の分析に接続していけるだろう。地域社会の動向を細かく分析していく手法は、安易に大きな物語を語る手法よりもより丁寧で説得力があるように思えた。読んでよかったと思える作品だ。