流行作家である燃え殻が、仕事や恋愛など多種多様な人生相談に応えたもの。本書において著者は決して偉そうな態度をとらないし、物事を決めつけたりしない。それよりも、他人の人生へと想像力を働かせ、他人の言葉を傾聴し共感する立場がみられる。これこそまさに臨床的な手法であり、この臨床的な立場から一度相手を受け止めたうえで発される回答はとてもやさしさに満ちている。
多分、人生相談というものは必ずしも答えを求めてなされるものではなく、まず自分の困った状況を受け入れてほしいのである。大上段のアドバイスなどをしたところで何ら心には響かないのではないだろうか。普通だったらそう言うよね、で終わりである。だがそこで終わらせないのが臨床家としての燃え殻の人生相談である。既存の紋切り型のアドバイスをいったん宙づりにし、そのエポケーから自分の人生経験などにさかのぼり回答を探っていく。非常に謙虚で思いやりに満ちた人生相談の回答である。そして、現代人はおそらくこういったケアを必要としていて、それだからこそこの連載は人気があったのではないか。