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ハラスメント世代

 今や会社組織だけでなく、スポーツ界や芸能界、芸術の界隈でも毎日のように世間をにぎわせているハラスメント問題。このハラスメント加害者の大部分が一定以上の年齢であることに気付かないだろうか。そう、一昔前まではハラスメントはごく普通に行われていて、それが現代ほど問題にされることはなかったのである。だが、ハラスメントの組織や構成員への有害性はもはや科学的に揺るがすことができず、基本的人権の観点からも法的に許容できるものではない。現代においてハラスメントは浄化される運命にあるといえよう。

 ハラスメントは連鎖する。ハラスメントを受けた人間は、十分に賢くなければそれが「社会」というものだと思い込んでしまう。そしてハラスメントを内面化し、自らもハラスメントを行う人間になってしまう。仕事にはこの程度の厳しさが必要だ。強いリーダーシップが必要だ。そのようにハラスメントを正当化し、ハラスメントを合理化してしまう。このようなハラスメントの内面化を行っているのが今だとだいたい40代後半以上である。このハラスメントを内面化している世代を「ハラスメント世代」と呼びたい。

 いま日本のいたるところで組織や構成員に有害な影響を与えているのがこのハラスメント世代なのである。昭和の根性論の価値観から抜け出せず、あたかもスポコン漫画のようなものが正しい部下の教育の仕方だと思っているのだ。もちろん、年代的にハラスメント世代であっても、ハラスメントの有害性を十分に学んでいる人も多数いる。特に管理職は優秀な人間が抜擢されているからハラスメントの有害性をよく知っていることが多い。だが、そこまで教育されていない人、または自ら学ばない人はいつまでもハラスメントを内面化し、有害な行為を繰り返す。

 重要なのは学習棄却である。学習棄却とは、過去に学習して内面化したことでも、時代や環境の変化がある場合には上手に捨て去り、新たな価値観や働き方を改めて学びなおすということである。この学習棄却には、謙虚さと柔軟性、日々の学びが不可欠である。ハラスメントについても、一度内面化しても上手に学習棄却し、現代に適応したマネジメントの仕方を学ぶということ。そうすることでハラスメント世代は過去の呪縛から抜け出し、新時代の新しい組織人へと生まれ変わるのだ。