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津止正敏『男が介護する』(中公新書)

 

 男性介護者の実態について書かれた本。介護する男性を「ケアメン」などと呼んだりして珍しいものだと思われがちだが、実際は介護している人口の三分の一は男性である。男性介護者は、他人とコミュニケーションをとるのが苦手だったり世間体を気にしたりプライドが高かったりでどうしても介護の問題を一人で抱え込みがちだ。だから著者などは介護する男性のネットワークを作り、そこでざっくばらんにお互いの苦労を話してもらったりしている。また、男性介護者の場合は介護と仕事の両立が大きな課題となっており、介護離職が後を絶たない。政府が介護離職者を減らす方針を打ち出していることから、具体的な指針が待たれる。

 本書は、実際に男性介護者を支持するネットワークを主宰している著者による男性介護者の実態や課題について書かれた本だ。主に認知症の母や妻を介護する男性が多いようだ。男性介護者という社会問題が生じていたことを私は本書で学んだ。確かに今まで知っているようで知らなかった男性介護者の存在、その実態。もはや介護を女性がやる時代は終わっている。男性も当たり前に介護する時代だ。著者たちの活動が男性介護者たちの少しでもの救いになることを祈っている。