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ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)

 

 イギリス在住の著者は、アイルランド人と結婚して混血の子どもを育てている。本書はイギリスの学校に通う息子との日常をつづったノンフィクションである。学校という社会は現実社会の様々な問題をそのまま集約したかのような舞台であり、人種の問題や宗教の問題、貧困の問題や教育の問題など様々な問題に著者と息子は直面する。著者は息子とそういった問題について軽やかに話しをする。

 本書はイギリス社会、ひいては新自由主義の制度を持つ様々な社会についての問題提起の書でもあるだろうが、それ以上に一人の母親の子どもとのコミュニケーションの記録である。本書を読んでいて救われるのが、何よりも親子関係が良好である点である。イギリス社会にはもちろん家庭が崩壊しているような家族もたくさんいるだろう。そんな中で著者が健全な家庭を築けているのがとても印象に残った。多面的な読みのできる本であり、射程も大きいと思うが、何よりも親と子との物語であると思った。