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藻谷ゆかり『山奥ビジネス』(新潮社新書)

 田舎におけるビジネスの成功例に関するルポ。地方経済を活性化し、地方移住を促進している全国の山奥地方の事例を丹念に紹介している。これからの日本の基幹産業は製造業から観光業にシフトしていく。地方では「ハイバリュー・ローインパクト」、つまり質が高く環境負荷が小さい財・サービスを生産し、SLOC(small,local,open,connected)シナリオによる地域活性化が求められる。田舎では家父長制、長男教、男女差別を撤廃し、UターンとIターンを活発にすることが重要。

 情報化が進展した昨今では、人口が減少した田舎でもビジネスを展開することが可能であり、それぞれの田舎が独自の価値を発信し、人々を呼び寄せることが成長のフロンティアとなる。人々を呼び寄せることは、一つには観光であるし、一つには移住である。観光客が多数来るようになり、多数の人たちが移住してくるようになれば、地域は活性化する。そのために必要なのが、本書の言う小さくて地元に根差しているけれど、開かれていてつながっているというSLOCシナリオである。本書で紹介されている具体例は、どれもが我々に希望を与えてくれる事例ばかりで、勇気が出た。