社会科学読書ブログ

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神山典士『トカイナカに生きる』(文春新書)

 都心から1時間~1時間半の地域のことを「トカイナカ」と呼ぶ。そこにおける地方再生の取り組みをルポルタージュ形式で取材している。トカイナカと都心の二拠点生活をする人たち、トカイナカで地方再生の活動をしている人たち、トカイナカで起業する人たち、トカイナカへの移住コンシェルジュをする人たち、中央からトカイナカに派遣されてよそ者力を発揮する人たち、トカイナカでの農業の新しい取り組み、そういうものが書かれている。若者たちはもはや都会への上り列車に乗らず、都会から田舎への下り列車に幸福を求めて乗り始めている。

 上京すれば成功が待っている時代は終わった。今となっては、若者は地方志向、それほど収入が高くなくとも心豊か・自然豊かな生活を求めている。地方はどんどんそれぞれの個性を主張するようになり、また地方独自の産業が活発になり、地方での豊かな生活がどんどん注目されるようになってきた。もちろんこの流れは情報化の進展やコロナ禍のインパクトなどによって加速されたのだと思う。だが、時代の流れとして地方は消滅するどころか新たなフロンティアとなっている。今後の地方の発展を期待する。