「高学歴ワーキングプア」の問題を世に広めた著者の後日談。高学歴ワーキングプアは社会問題として認知され、関連する書籍も多数出版されたが、それは結局うやむやのまま終わるだろう。なぜなら、高学歴ワーキングプアの渦中にあった人間たちは初老に達し、自らの苦境をアピールすることが期待できないし、現在渦中にある若い研究者たちには情報が行き届いており十分な覚悟をもって研究の世界に入っているので特に声をあげないし、そもそもこの問題は政治マターになりづらい。
「高学歴ワーキングプア」出版から13年たち、その間に自らが体験したことをいろいろとエッセイ風に書き連ね、結局その問題はどういう問題だったか振り返り、大学における教員の採用についてあらためて考えを巡らせ、結局はあきらめの境地に至っている。だが、若手研究者をめぐる状況は依然厳しく、ぜひとも改善が求められる状況は変わっていない。そこについて何らかの政治的な対応が求められるところである。