新自由主義に基づく自己責任論に異を唱えるもの。一人一人が自分について責任を負っているとする強い責任は、人々を孤立させ、責任転嫁などを引き起こした。本書が強い責任に代わって提唱する弱い責任とは、自分自身も傷つきやすさを抱えた弱い主体が、連帯しながら他者の傷つきやすさを想像し、それを気遣うことである。弱い責任を果たすため、我々は誰かもしくは何かを頼らざるを得ない。責任を果たすことと頼ることは両立する。
自己責任論への現代哲学に基づく理論的な批判である。自己責任などのマッチョな価値観は今や過去のものとなりつつある。高圧的な態度をとる人間はモテず、やさしい人間がモテる。他人への配慮がない人間は孤立し、お互いに配慮しあえる人たちが心の安心を得ている。現代はそういう時代になっている。そのような現代に寄り添うように現代哲学は発展し、そこから生まれる「弱い責任」論である。私としては当たり前の価値観に理論的な基礎が与えられた印象である。