社会科学読書ブログ

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塩原良和『分断と対話の社会学』(慶応義塾大学出版会)

 現代社会に生きる我々に必要なものは何かについて社会学の見地から解説。互いに異なる他者が否応なく共に投げ込まれるグローバリゼーションの時代に、他者と対話と共存を図るための他者への想像力が必要なことを説いている。後期近代において、すべてが流動化する中、確固たるものが失われていて、我々は常に変化にさらされている。そのような社会を生き抜くための想像力の重要性。

 現代社会についての社会学的議論を手堅くまとめた教科書的な本であり、社会学入門としても十分使える概説書である。専門的な議論や特殊な議論にまでは踏み込んでいないので、読んでいて物足りなくはある。私としてはすでに知っていることが多く、この本は社会学の初学者向けの本ではないかと思う。ブックガイドもついているし、これから社会学を学ぶ人のための格好の入門書である。