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佐藤卓己『あいまいさに耐える』(岩波新書)

 輿論主義を唱える筆者が、その実現のために必要なネガティブ・リテラシーを提唱している本。世論は世間の評判・多数意見であるが、輿論は各種の意見を尊重し、ときには少数だが合理的な意見を言う。筆者はこの輿論こそが大事だと主張する。だが、速度を重んじるファスト政治が台頭し、理性ではなく感情で動く情動政治が主流となっていく中、輿論主義を実現するためには、「本当に求めるものは吸収し、どうでもいいものは成り行きに任せる能力」であるネガティブ・リテラシーが必要である。

 確かに現代社会は情報であふれかえっている。それらにいちいち反応していては反応を誤ってしまう。重要な情報にだけ反応し、どうでもいいものには反応せず過ぎ去っていくのに耐えることは重要だと思う。情報の取捨選択能力であるが、どうでもいいことについてはあいまいなまま、そのあいまいさに耐える能力が重要だということである。まったくその通りだと思った。