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暉峻淑子『承認をひらく』(岩波書店)

 承認をキーワードとして読み解く現代社会。人間にとって相互承認は重要であるが、承認を過度に求める病や、一度承認されて登り詰めた地位を失いたくないために罪を犯す事例などもある。また、貧困や社会的排除、つまりは承認されないことによって大きな社会的事件を犯した事例も多い。社会参加によって承認されることで、福祉社会や民主主義社会は充実する。また、政府からの上からの承認というものは我々の生活と切っても切り離せない。

 承認をめぐる議論はアクセル・ホネットが詳細に展開しており、本書もホネットの議論を土台にしている。本書を読んで目を開かれたのが、政府による承認や権力者による承認という上からの承認という観点である。人間同士の相互の承認関係についてはよく理解しているつもりだったが、この上からの承認という視点は新しく、いろいろ考えさせられる問題系をはらんでいると思った。