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近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

 就職氷河期世代について、労働経済学の観点から手堅く研究した本。就職氷河期世代は、上の世代に比べて雇用が不安定で年収が低く、その差は解消しない。それ以降の世代においても、景気が回復しても雇用が不安定で年収が低いままだ。だが、氷河期世代は上の団塊ジュニア世代よりも子どもを多く産んでいる。としても、氷河期世代以降世代内格差は拡大し、ニートや無業者が増えており、将来の生活が懸念される。

 本書はデータに基づいて氷河期世代の実像を手堅く研究している本であり、信頼性が持てる。氷河期世代のときに起こった雇用の不安定さや所得の低下は、不可逆的にその後の世代も縛ってしまったというのは衝撃的だった。また、それであっても、おそらく生殖医療などの普及のおかげだと思うが、子どもを産む数は多くなったというのも驚きだった。とても勉強になった。