論理的思考の多様性について解説している本。我々が大学教育で習うようなアメリカ式の論文の構成は唯一正しい論理の在り方ではなかった。効率性と目的の達成に主眼を置くアメリカ的エッセイだけではなく、公共の利益に主眼を置き弁証法を用いるフランス式ディセルタシオン、真理の保持と規範の順守に主眼を置き規範へと演繹されるイラン式エンシャー、共感と哀れみに主眼を置く日本式感想文など、論理の在り方は多様な形式をとる。
本書は、アメリカ式の小論文だけが唯一正しい議論の仕方ではなく、何を目的にしてどのような領域で議論を展開するかによって様々な議論の展開の仕方があることを主張している。読者には、その場その場に応じて適切な論理展開の仕方を用いる柔軟性が要求されており、そのような柔軟性を獲得するため理論が緻密に展開されている。かなりの名著である。