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河野真太郎『ぼっちのままで居場所を見つける』(ちくまプリマー新書)

 孤独の望ましい在り方について論じている本。18世紀から20世紀にわたって、孤独は発見されていったが、孤独には否定的な「ロンリネス」と肯定的な「ソリチュード」がある。18世紀から19世紀には、孤独のロンリネスとしての側面が発見されていったが、その対処法として孤独の意味を変える様々な努力がなされ、様々な形のソリチュードが探求された。ソリチュード、創造的で幸福な孤独を手に入れるため、社会的にはベーシックインカムを導入することが本書によっては提唱されている。

 確かに、人との関係に忙殺されていては豊かで創造的な時間は確保できない。孤独は単に寂しいだけでなく、より肯定的な側面を有する。排除型社会によって孤独で不幸な人は増したが、そうではなく幸福で孤独な人を増やすための提言の書だ。そのためには公的に一定程度の収入があり、生活に余裕があることが必要だとするのが本書である。物質的な側面から孤独を肯定的なものとする提言は、ある意味現実的である。