本書は「女性解放思想」というよりも「女性非解放思想」の歩みといった様相を呈している。ルネサンスや宗教改革、西洋近代哲学の歩みの中で、それでもなおいかに女性が解放されなかったについて大幅な紙幅を費やしている。女性が西洋思想が進展していく中でなおも一向として解放されなかった歴史を主に書いている。最後の方にウーマンリブの話が出てきて、ようやく女性解放の思想にたどり着くようになっている。
ここまで思想史を丹念に跡付けながら、いかに女性が解放されなかったかについて詳細に論じている本は類を見ない。これは、女性解放という思想がいかに困難で多難に満ちていたかをこれでもかというくらい突き付けてくる。女性差別の根深さを西洋思想を題材に重厚に跡付けている。これは救いのない物語であり、現代のフェミニズムがどれほどの光を女性にもたらしているかそのありがたみがわかる本である。
