私は時代遅れの人間なのかもしれないが、最近あまり聞かなくなった「まごころ」という言葉が好きである。今の時代、こんな素朴で愚直な言葉はあまり好かれないのかもしれないが、それでも私はそういう素朴さや愚直さが好きなのだ。
典型的には、食品メーカーが食品を「まごころこめて作りました」というのがかつてよく使われた用法だ。この「まごころ」にはいろんな意味が込められている。
まずは、メーカーが自分の職務に忠実に邪念を排して真率に取り組んで食品を作ったこと。ここには、与えられた職務を忠実にまっとうすることが含意されている。
次に、メーカーがあくまでお客さんのために、お客さんの幸せのためにお客さんの期待に応えて食品を作ったこと。ここには、利他性や応答責任が含意されている。
そして、メーカーが、お客さんと良い関係を取り結んでお客さんとコミュニケーションをとるきっかけを作っていること。ここには、丁寧なあいさつのような、相互関係を構築する発端が含意されている。
職務なんて適当にこなしていればいい。他人のためなんてあまり考えなくていい。責任なんて負いたくない。人と深く関係したくない。そういう最近のトレンドとは真逆のことをこの「まごころ」という言葉は含意している。だが、そんな時代だからこそこの「まごころ」の復権を私は唱えたいのだ。
まごころをもって仕事に専念して他者のために他者に応えコミュニケーションに開かれていく。そんなマインドセットが失われているのであれば、もう一度取り戻してみんなが豊かな社会関係を築けるようにしていきたい。