触覚がひらく人とのかかわりの可能性について論述している本。倫理については、まなざしの相克といった具合で視覚優位の議論がなされてきた。だが、触覚にも独自の倫理があり、触覚による人とのコミュニケーションにも十分意義がある。触覚は持続的で、深みがあり、場合によっては相手の奥の方へとも入り込める。「さわる」のではなく「ふれる」のが相互的な倫理のやり取りであり、自他の境界をあいまいにし、共鳴や信頼を生み出す。
そもそも倫理とはなんであるか、人とのかかわりとはなんであるか、そういうことを問い直すきっかけとなる本である。普通我々が思い込んでいる、視線のやり取りや言葉のやり取りとは違う次元のコミュニケーションがあり、それが触覚を介したコミュニケーションだ。ふれることが開いていくコミュニケーションを読みといていくことで、他者とのかかわりについて再考を促される。
