カミュの簡単な評伝。カミュが生きたのは、世界大戦、大量殺戮、強制収容所、核の脅威、イデオロギーによる抑圧、憎悪とニヒリズムの時代。その中で、カミュは三つの系列の思想を残した。一つは「不条理」の系列。絶対的価値の失われた時代に死の定めのもとにある人間を描く。一つは「反抗」の系列。歴史の名のもとに行われる抑圧と殺人の拒否。一つは「愛」の系列。生きることの絶望なくして生きることへの愛はない。
アルベール・カミュというフランス文学の巨人について簡潔明瞭に描かれたスケッチである。カミュの作品はどれもが素晴らしく、思想に満ちている。彼の残した巨大な足跡をたどっていくための導入となる本であり、私も初めて接する情報が多く勉強になった。カミュを読み返したい。
