社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

難波優輝『物語化批判の哲学』(講談社現代新書)

 物語とは異なる人生の理解の方法を提言する本。就活であったり自分語りであったり他者理解に際して、物語の形式で人生などを理解することが多い。だが、物語というものは目的志向に人生をゆがめてしまうものであり、実際の人生はもっとエピソード的であったり物語に回収されない部分も多い。人生の理解としては、ゲーム・パズル・ギャンブル・おもちゃ遊びといったゲーム的理解も可能なのであって、いつ物語的理解をしていつ物語的理解をするべきでないのかについてきちんと判断すべきである。

 本書は巷にあふれる過剰な物語的理解に警鐘を鳴らし、人生というものはもっと異なる理会の仕方もあるのだということを示している。確かに、物語の体裁を取らないエピソード的な事実というものは人生に充満しており、そういったものはゲーム的理解に適すると思われる。非常に共感するし、勉強になる本だった。ここからさらに議論が深まればよいと思う。