社会科学読書ブログ

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澤田智洋『人生にコンセプトを』(ちくまプリマー新書)

 夢よりもコンセプトを持つべきだとする本。夢とは向かっていく場所だが、コンセプトは立ち戻れる場所である。夢が結果であるならコンセプトは過程である。夢がゼロをプラスにするものならコンセプトはマイナスをプラスにするものである。夢が高揚感をもたらすものならコンセプトは人生の迷いを解決するものである。夢が思い付きで完成するものならコンセプトは徐々に磨いていくものである。夢は一つしか持てないがコンセプトは複数持てる。

 障害児を抱えた父親として、弱さを力に変えていくことをモットーにしているコピーライターの人生論である。みんなが夢を抱いていたのはもう過去の話。みんなもっと現実的になっていて、夢なんかより今あるこの困難をどういう考え方で処理していくかというコンセプト重視になっている。そういう意味で、コンセプトは実践の考え方である。実践重視なのは、現代が困難に満ちた世界であり、みんなが現実に直面しているからだろう。