平野啓一郎の時評集。政治について発言することを積極的に奨励し、政治について普段から議論することの大切さを伝えてくる本である。全体的にインテリによる時代の空気を読み取った深い教養に基づく時評となっている。読んでいてはっとするような箇所がいくつもあり面白い。
一番心に残ったのがいじめに関する議論である。いじめは、確かに加害者側にも理由があるかもしれないし被害者側にも理由があるかもしれない。何らかの目的の正当性があるかもしれない。だが、いくら目的が正当であっても、いじめという汚い手段を取った時点で手段が不当である以上、すべてが不当になってしまう。目的に正義があっても、手段が不正義であればすべてが不正義になってしまう。自戒を込めて心に刻みたい。
