平等と不平等についての哲学的考察。不平等とは、①剥奪:恵まれない人々に貧窮ゆえの苦しみを生み出す、②スティグマ化:社会的地位の不平等が特定の人々を劣った者とみなす関係を作り出す、③不公平なゲーム:政治的・経済的な手続き上の公正さをゆがめる、④支配:社会的・経済的格差に基づき一部の者が政治を牛耳る、である。それに対して平等主義とは、①充分主義:一定以上の閾値を満たす、②優先主義:不遇な人々の状況を優先して改善する、③運の平等主義:不運の影響を取り除く、④関係の平等主義:対等な存在としての人々の社会をつくる、である。
平等や不平等をしっかりと定式化し、理論的に高度な議論を展開していくすぐれた本である。ロールズ、サンデル、ピケティなどの主要な主張がよくわかる。平等や不平等は一筋縄ではいかない概念の複雑さがあり、それを解きほぐしつつ、あるべき平等について論じている。非常にスリリングかつ重厚、精緻であり、たいへん読みごたえがあった。
