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南川高志『マルクス・アウレリウス』(岩波新書)

 『自省録』の著者として知られるマルクス・アウレリウスの皇帝としての生涯を追う本。マルクスは後期ストア哲学の哲学者としても知られるが、その実際の皇帝としての生きざまはどうだったかについて書いている。マルクスは、帝国住民の安寧を目指したが、疫病大流行、戦争、反乱に直面して、危機的状況の中でただ皇帝の職務に勤しむことしかできなかった。哲学理念に沿うというよりは先帝アントニヌスの範に従った。

 本書は、マルクス・アウレリウスの、哲学者としての側面ではなく、皇帝としての側面について迫った本である。だが、彼の哲学にも、彼が皇帝の任務において直面したことが反映されているわけであり、彼の伝記的事実は彼の哲学を理解する上でも貴重なものである。当時のローマ帝国の在り方についても知れてよかった。