自己決定をめぐる諸問題について考察。社会が個人化したことで、我々は自己決定を重視するようになった。だが、自分で決められる範囲はそれほど広くなく、自己決定については自己責任を求められる社会になった。また、決定について環境や運の影響も大きく、それにもかかわらず結果責任を強く求められる。自分で決めたことに束縛される社会は、息苦しさや自己責任論が蔓延し、格差を放置しかねない。
自分で決めていることなんてわずかにすぎない。自分で決めていると思っても、決めた自分の価値観や選択肢は社会によって与えられているわけだし、他人の意見によっても多分に影響されている。にもかかわらず、自己決定という虚構は自己責任という虚構を生み出し、本来分散するはずの責任が個人に集中する。そのような自己決定をめぐる諸問題を丁寧に考察していてとても勉強になった。
