政治的中立性を名目に表現の自由が過度に制約されていることを主張している本。政治的中立性を維持するため、政治的中立性を損なうから、といった理由で、公共の広場などにおける政治的表現などが規制される例が後を絶たない。政治への忌避感やトラブル回避、政治家への忖度が背後にあるのだが、それを粉飾するために「政治的中立性」という題目でもって恣意的に表現の自由が制限されてきた。
確かに、パブリックな空間は二面性を持つ。一面において、それは公共の場として誰にでも開かれているが、一面において、それは公共の場ゆえに偏向が許されない。本書はパブリックフォーラム論を駆使してそういった問題を快刀乱麻に分析している。役所には役所の事情があることは分かるが、表現の自由の人権としての優越性も無視できない。法律論議を久しぶりにじっくり読んだ。
