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山内進『決闘裁判』(ちくま学芸文庫)

 決闘裁判の法的意義について詳述した本。決闘裁判とは、法廷で両当事者に決闘用の武器をもって戦わせ、その勝者を正しいものとする方法である。決闘裁判の結果は、神判としての超越的な意味合いを持つと同時に、主体的で自己の実力にかけることのできる性格を持つ。この後者の意味が、熱湯神判などの他の神判と異なるところであり、対立当事者が直接敵対する者同士として争い、裁判官が両社の争いをフェアに進行させ判決を下すという当事者主義の源流となった可能性がある。

 決闘裁判という制度は現代では野蛮であるが、古代中世においては普通に行われていた。もちろん合理的な裁判も行われていたが、決闘裁判には神の裁きとしての大義があった。本書は、決闘裁判という異色の制度に刑事司法制度の当事者主義の源流を見出す興味深い本である。確かに、武器を弁論に置き換えて、お互いに戦わせてフェアに判断を下すという意味で、決闘裁判と近代の刑事裁判は似ているのかもしれない。とても面白かった。