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畑中章宏『小泉八雲』(光文社新書)

 小泉八雲の生涯と思想を描いた評伝。八雲は新聞記者として世界各国を旅し、最後に日本に落ち着いた。小泉は日本文化が香水の香りのように移ろっていくものだと感じた。八雲は、異国からの旅人が日本文化を見たという有形文化よりも、言葉・謎・語り物・昔話・伝説という言語芸術や、妖怪・幽霊・禁・呪という心意現象を重視し、日本文化を論じた。八雲は目に見えやすいものよりも目に見えない日本文化について記述した。

 八雲は柳田国男に先立って日本民俗学の先駆的な著作をあらわした。それも、ただ外国人が物珍しく日本の有形文化を記述するのにとどまらず、目に表れない日本の精神をとらまえようとした。この時代、日本を訪れ日本について記述した外国人はほかにもたくさんいるが、その中でも洞察の深さは群を抜いていたようである。このような人たちによって日本は外部の視点からとらえなおされていたようだ。