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貞包英之『消費社会を問いなおす』(ちくま新書)

 消費社会の水平的展開について詳述した本。消費行動というものは、生産行動と対になるものと単純には考えられるが、消費対生産という垂直的な次元ではとらえきれない雑多な要素が消費という行為には含まれている。消費者というものは決して自己志向的で合理的であるわけではなく、他者志向的であったり非合理であったりもする。安価に物を買ったり倫理的な消費をする賢い消費や浪費など、消費行動にはコミュニケーション的な水平的展開がある。

 近代経済学の、単純な生産・消費という理論構造から脱却し、より広い視点から多様な消費行動について分析した優れた本である。私も目から鱗が落ちるところがたくさんあった。消費をコミュニケーションの次元で考えるということがとても新鮮で、そこから開かれていく視野が理論的にとても新しい。大変勉強になった。消費社会とは一筋縄ではいかないものだ。