生活史の実践について書いた本。ひとりの人間の人生の語りあるいはそこで語られる個人の人生そのものを「生活史」と呼ぶ。生活史を書くのは、「語り手の人生を尊重する」という態度があれば誰にでもできる。社会的に分断・排除された人の声は特に圧殺されやすいので、生活史として拾い上げる必要があるが、どんな人生の語りであっても同じく生活史である。他者を安易に理解することの暴力に自覚的でありながら、積極的に受動的であること。そういう態度が必要である。
質的社会学の実践として有効な生活史という方法。それについて第一人者がわかりやすく綴っている良書である。私自身、著者の著作についてはこれまでも何冊か読んできていて、そこでなされている生活史の方法について共感するところが多い。統計分析では見えて来ないもの。それは統計分析のように客観的ではないかもしれないが、だからこそ見えてくるもの。それは大事にしたい。
