犬と親交の深い哲学者が、その人生の立ち位置から犬儒派的な視点を新たにとらえ返している。犬儒派の立場からすると、犬のような低い視線から、改めて地面や根底や足元を見つめることで価値が逆転する。世界そのものに近づくために、犬目線で世の中を見てみる。下へ下へと潜行することで子ども目線になる。そうすると、哲学の諸問題も別な様相を呈する。
一ノ瀬正樹先生の秀抜な哲学エッセイだ。まさに垂涎ものの一冊であり、非常に楽しく読めた。ただの机上の空論ではなく、先生の犬とともに生きた人生に根差した犬儒派宣言であり、そこには実感や深い体験の強度が潜んでいる。体験の強度から放たれる思想の強度なので、読んでいて面白い。もちろん、一ノ瀬先生の全知性は、この一冊には到底おさまりきらない。だが、この一冊を読むだけでとても面白い。
