カレル・チャペックの翻訳で知られる文学者の千野栄一の手によるエッセイ集である。学問本体よりも学問の周辺事情についてあれこれとつづっている。中でも、自らの趣味である洋書の稀覯本の収集については特に熱が入っている様子だ。それだけではなく、言語というものについての洞察や、自らがチェコ人と国際結婚し、子どもたちのバイリンガルの在り方などについてもエッセイをつづっている。
学者というものは文章を書くのが仕事なので、言語化能力が高く、エッセイも面白い。古本をたずね歩く中での人との交わりなど、人間への愛情も伝わってくる一冊だ。学者が本の虫であることは当然であるとして、それ以外の雑事が諸々伝わってきて面白い。いわば学者が生活者として素の自分をさらけ出している本であると言えよう。とても面白かった。
